最近封切りになった、サンドラ・ブロック主演の映画、The Blind Sideを見ました。ホームレス出身だったアフリカ系アメリカ人の男性・マイクが、努力してプロフットボールプレーヤーになるまでの軌跡を描いた、実話に基づいた映画です。彼を引き取って面倒を見ることになった女性をサンドラ・ブロックが演じています。お子さんを育てていらっしゃる親御さん、部下や生徒を指導している立場の方々には、是非、見てほしい、心温まるストーリーです。この映画の中に、人の可能性を伸ばすためのたくさんのヒントが隠されていると私は思います。

 

映画のストーリーをここで細かくお知らせすることは控えますが、心に残った一つの場面をご紹介します。育ての親となったサンドラ・ブロックが、彼女自身の二人の子どもたちと共に、高校生のマイクにも、絵本の読み聞かせをします。その時の子どもたち三人と彼女の表情が、とても穏やかでしあわせに満ちていました。

 

その場面で私が連想したのが、日本で大活躍している、現役高校生でありながらプロゴルファーになり、しかも今年は年間賞金獲得額一位に輝いた石川遼選手のことです。石川遼選手は、ゴルファーとしての技術の高さもさることながら、立ち振る舞いのすばらしさ、インタビューでの言葉の表現力の高さに、多くの人が感心し、注目している人気者です。ある雑誌のインタビューで読んだのですが、「なぜ、インタビューで見られるように、ボキャブラリーが豊富なのか?」と聞かれた石川選手が、「意識したことはないが、あえていうならば、小さいときから母親に絵本をたくさん読んでもらった。絵本を読んでもらって泣いたこともある。それが今、言葉の表現をするときに役に立っているのかな。」というように自己分析していました。私が新聞、TV番組を通して石川選手を見ている限り、彼は感情をことばで表現することがたいへん得意なようです。「悔しかった」「残念だった」「びっくりした」「うれしい」と、ことばで自分の気持ちを的確に表現し、彼の顔の表情も素直に豊かに彼の気持ちを表しています。そのことが彼の大きな魅力の一つになっています。また、ことばや表情での感情表現が豊かにできることは、精神的なコントロールを常に要求されるプロゴルファーという仕事の成功につながっているのかもしれません。伝統的な日本人の価値観の一つである、「感情はなるべく出さない」というやり方に彼は従っていません。でも、多くの人々に彼のやり方は受け入れられています。

 

私の個人的なことですが、母親にたくさんの絵本を読み聞かせてもらいました。自分で本を読むことも大好きでしたが、小学校5年生くらいまで母に絵本や本を読んでもらったという思い出は、私の宝物になっています。石川選手が言うように、物語ごとに、読んでいる母も泣き、私も妹も泣き、また笑い、びっくりもしました。お気に入りの絵本は何度も何度も読んでもらいました。母が仕事で疲れているときには、半分居眠りしながらだったので、一行飛ばされることもありました。私が「おかあさん、今、一行飛んだよぉ!ちゃんと読んでよ。」とゆり起したことも今ではなつかしい思い出です。そのおかげで私の国語の成績はずっと良かったですし、気持ちを表現したり、人の話をしっかりと聞くための訓練になったと思っています。

 

特に小さいお子さんのいらっしゃる親御さん、どうぞ良質の絵本や本を選び、読み聞かせをたくさんしてあげてください。英語の本でも日本語の本でもいいです。その中で、ことば、特に気持ちをことばにするという作業を、お子さんは、楽しく、自然に学んでいくことができるでしょう。また、絵本を読んでいるときには、親御さんもおだやかな気持ちになります。ホリデーシーズンに絵本の読み聞かせを通して、親子のきずなを深めてください。


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