私は心理カウンセラーとして、クライアントの方の子どものときのお話を聞く機会をいただいています。たくさんの方から子どものときのお話を聞いているうちに、子育てには大切なポイントがいくつかあるのだなあという印象を私は持ちました。私は、このコラムのなかで、親御さん、学校の先生など、子どもさんたちにかかわる人たちのために、日本とアメリカの両国でカウンセラーとして活動してきた体験を基に、子育てについて大切なポイントを述べていきます。そして皆さんに後悔しない子育てをしていただければと願います。

 

<自尊心をはぐくむ>

 

人がしあわせに生きていくためには、自尊心を持つことがとても大切です。

 

それでは、自尊心とはいったいなんでしょうか。

 

簡単に言うと、自分の気持ち、意見、好みなどを、他人に左右されることなく大切にすることです。健康的に自尊心が育っていれば、自分らしさを大切にして自信を持って生きていくことができます。

 

実は、ある調査によると、日本人は世界的に見て自尊心がとても低いという結果が出ています。

 

自尊心が低い人は、気持ちがふさいだり不安になったりする傾向が大きくなります。また、自信を持つことができないので、しあわせに感じられることも少なくなります。私は、日本人が一年間に3万人以上もの人が自殺に追い込まれているのも、自尊心をうまく持つことができないという日本人の特性も少なからず影響しているのではないかと考えます。

 

それでは、自尊心を育む子育てをするには、どんなことに気をつければいいのでしょうか。

 

私は、親や先生たちが、子どもの気持ちや考えを大切に受け取る、認めることで、その子の自尊心を育てることになると思います。特に親、先生が子の「気持ちをくむ」ことはなにより大切です。子どものこころの中には、さまざまな気持ちが自然にわいてきています。うれしい、楽しい、くやしい、やきもちをやく、いらいらする、おこる、さびしい、みちたりている、悲しい・・・。これらが子どものこころの中にわいてくる気持ちです。親や先生は、これらの気持ちを否定しないでそのまま認めて、ことばを使いながら子どもの気持ちによりそって共感を示していくことが重要です。

 

子は親や先生たちに「わたしの気持ちをわかってほしい!」というとても強い欲求を持っています。親や先生に気持ちを十分に理解してもらえれば、子はとても安心して、落ち着いた態度をとりもどすことができます。そして「私のきもちを出してもいいのね。パパやママ、先生は私のことをよく分かってくれるわ。私は愛されている。私はみんなにとって大切な存在なのね。」という体験を、親や先生を通してたくさんすることができれば、自尊心が健康的にはぐくまれます。

 

また、子を上手にほめることも自尊心を育むことにつながります。自信を持って人生を生きていくことができるようになります。

 

さて、皆さんは自分の親や先生から、このような体験をたくさん与えてもらったでしょうか。一般的に、日本人の親や先生は、アメリカ人に比べ、気持ちをくんでことばで表すことがあまり上手ではなく、子をほめることが少ないように私には見えます。子をほめない、謙そんすることに価値を置く文化だということもあるでしょう。しかし、その結果、日本人の自尊心が低くなって、精神的に不安定な状態に陥るのは、たいへん残念です。

 

みなさんの中で「親や先生は一生懸命に私を育ててくれた。でも、私は親や先生に十分に気持ちをくんでくれなかった。あまりほめられなかった。」という方がけっこういらっしゃることでしょう。そういった方のほうが多いのではないかと私は想像しています。もしそうでしたら、どんなふうにご自分のお子さんの気持ちをくんだり、ほめたらよいか分からなくて、子育てにとまどうのも無理はありません。

 

このようなときには、心理カウンセリングが役に立つ可能性があります。子どもさんが大きくなってから後悔しないよう、カウンセラーにお気軽に相談してみてください。

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